高圧電力の基本料金の仕組みと計算方法|削減方法
「高圧電力の基本料金って、なぜこんなに高いの?」
「どうすれば基本料金を下げられるのだろう?」
「そもそも基本料金の計算方法がわからない」
などとお悩みではありませんか?
昨今、電気代高騰の影響により、企業では電気料金を見直す動きが加速しています。
実際、弊社にも経費見直しのニーズを持つ企業様から電気代見直しの相談が増えていますが、「電気料金の明細の見方すら分からない」という担当者の方も少なくありません。
そこで、この記事では高圧電力の基本料金の計算方法はもちろん、東京電力や関西電力をはじめとした旧一般電気事業者の料金メニューをもとにした計算例を紹介します。
目次
毎月の電気代に含まれる「基本料金」とは?
基本料金とは、月々の電気の使用量に関係なく、毎月定額で発生する固定料金のことをいいます。
基本料金は、電力会社が電力の安定供給の維持や、発電の設備費や人件費・機材費といった諸経費をまかなう目的で設定されています。
そのため、電力を全く使わない月でも支払う必要があります。
なお、基本料金は全国一律ではなく、使用する電力量や、契約する電力会社によって異なります。
高圧電力の基本料金の内訳
まず、大手電力会社の基本料金の構成は以下のとおりです。
(注)大手電力会社とは、北海道電力・東北電力・東京電力・北陸電力・中部電力・関西電力・中国電力・四国電力・九州電力・沖縄電力の旧一般電気事業者10社のこと
【高圧電力の電気料金の構成】 電気料金=基本料金+電力量料金+燃料費調整額+再生可能エネルギー賦課金 |
電気料金の中の「基本料金」は、基本料金単価・契約電力・力率の3つの構成に分けられます。
【高圧電力の基本料金の計算式】 基本料金=基本料金単価 × 契約電力 × 力率割引(割増) |
上記のそれぞれの費目の詳細についてお伝えします。
基本料金単価
基本料金単価とは契約電力1kWごとにかかる単価のことを言い、電力会社の契約メニューによって異なります。
事務所ビルや商業施設などが契約する契約電力500kW未満の「業務用電力」の基本料金単価は以下の通りです。
電力会社 | 基本料金単価 |
東京電力エナジーパートナー | 1,890円00銭 |
関西電力※高圧電力AS | 1,911円80銭 |
中部電力ミライズ※高圧電力第2種プランL | 1,352円74銭 |
※2024年4月からの基本料金単価
なお、電力会社の契約メニューによっては、電気使用量が0kWhの場合(予備電源も使わなかった場合)、基本料金が半額になるプランもあります。
契約電力
契約電力とは、電力会社との契約上、使用できる最大電力のことをいいます。
なお、契約電力の決め方は、契約電力のkW数によって「実量制」と「協議制」に分かれます。
以下の表をご覧ください。
高圧 | 小口 | 50~500kW | 実量制 |
大口 | 500~2,000kW | 協議制 | |
特別高圧 | 2,000kW~ |
「実量制」と「協議制」の詳細は以下の通りです。
実量制とは
契約電力500kW未満の「高圧小口」の場合、契約電力の決定方法は「実量制」となります。
実量制とは、直近1月の最大需要電力と前11月の最大需要電力のうち、いずれか大きい値を算出し、契約電力として採用する方式です。
例えば、直近12ヶ月のなかで最も最大需要電力が高い月が2月だった場合、2月の数値が向こう1年にわたっての契約電力(370kW)になります。
「契約当初よりも基本料金が上がっているかも…」と思ったときは、まずは契約電力が増えていないかをチェックしましょう。
反対に、省エネなどをおこなって直近12カ月の最大使用量を抑えた場合、契約電力は下がります。
ではどのように「最大需要電力」が決まるのでしょうか、その仕組みをご説明します。
最大需要電力の決め方
まず、最大需要電力とは、30分ごとの平均使用電力のうち、月間で最も大きい値(ピーク値)のことをいいます。 1日24時間を30分ごとに区切ると、48個のコマに分かれます。仮に、1ヶ月が30日間の月であれば、1,440個(48個×30日=1,440)のコマになります。 この1,440個のコマのなかで、30分ごとの平均電力使用量がもっとも多かったコマの値が、その月の最大使用電力量になります。 そのため、電気代の基本料金を抑えるためには、30分ごとの平均使用電力量が契約電力を超えないように節電することが重要です。 つまり30分ごとのピーク値が変わらなければ、全体の電力使用量をどれだけ節約しても、契約電力は下がらないため、注意しなくてはなりません。 |
協議制とは
続いて「協議制」について説明します。
協議制とは、電力会社との協議によって基本料金を決定する方式です。
協議制は、契約電力が500kW以上の高圧大口・特別高圧が対象となります。
実量制と同じく、直近12カ月の平均電力量を算出したのち、電力会社と年に1度の契約更新時期に「使用する負荷設備」「受電設備の内容」「同一業種の負荷率」などの内容をふまえて契約電力を協議します。
なお、月ごとのデマンド値が契約電力を超えた場合、実量制とは違って、通常より割増しの違約金を電力会社に支払うことになります。
関連記事:契約電力の決め方|高圧(500kW未満・以上)の基本料金を下げる方法まとめ
力率とは
力率(読み方:りきりつ)とは、発電所から送られた電力のうち、有効に使われた電力の比率のことをいいます。
「有効に使われない電力もあるの?」と疑問に感じた方もいるかもしれませんが、結論、使われない電力もあります。
なお、発電所から送られてくる電力のうち、実際に使われる電力を「有効電力」、使われなかった電力のことを「無効電力」といいます。
この有効電力が、送られてきたすべての電力(皮相電力)のうち、何%にあたるかを示したものが力率です。
力率割引・割増しとは
電力会社からすれば、有効電力の割合が高いほうが望ましいです。
なぜなら、電気を送ったとしても、消費されない無効電力には請求ができないからです。
そのため、電力会社では、力率の高低に応じて割引・割増制度を設けています。
たとえば、基準となる力率が85%の場合、力率が1%上がるごとに基本料金が1%割引されます。
反対に、力率が85%を下回る場合は、その下回る1%ごとに基本料金が1%割増しされます。
関連記事:電気料金の力率割引をわかりやすく解説|計算式や改善方法もご紹介
大手電力会社の基本料金の計算例
高圧電力の基本料金の構成を理解したところで、つづいては旧一般電気事業者別に基本料金の計算方法をお伝えします。
北海道電力
高圧電力(一般料金)の料金単価を参考に計算してみましょう。
基本料金 | 2,829円60銭 |
電力量料金 | 21円51銭 |
※2024年4月1日実施分
契約電力が200kW、力率が100%(割引15%)の場合の計算式は以下になります。
基本料金:2,829円60銭 × 契約電力:200kW × 力率割引:0.85
月の基本料金481,032円になります。
東北電力
東北電力の高圧電力Sの料金単価を参考に計算してみましょう。
基本料金 | 1,690円70銭 | |
電力量料金 | 夏季 | 31円23銭 |
その他季 | 30円09銭 |
契約電力が350kW、力率が85%(割引無し)の場合の計算式は以下になります。
基本料金:1,690円70銭 × 契約電力:350kW × 力率:1
月の基本料金591,745円になります。
東京電力エナジーパートナー
東京電力エナジーパートナーの業務用電力(500kW以上)の料金単価を参考に計算してみましょう。
基本料金 | 1,890円00銭 | |
電力量料金 | 夏季 | 20円32銭 |
その他季 | 19円16銭 |
契約電力が700kW、力率が100%(割引15%)の場合の計算式は以下になります。
基本料金:1,890円00銭 × 契約電力:700kW × 力率割引:0.85
月の基本料金は1,124,550円になります。
北陸電力
北陸電力の業務用電力の料金単価を参考に計算してみましょう。
基本料金 | 2,151円00銭 | |
電力量料金 | 夏季 | 27円25銭 |
その他季 | 27円25銭 |
契約電力が100kW、力率が100%(割引15%)の場合の計算式は以下になります。
基本料金:2,151円00銭 × 契約電力:100kW × 力率割引:0.85
月の基本料金は182,835円になります。
中部電力ミライズ
中部電力ミライズの高圧タイムプラン(高圧電力第1種)プランHの料金単価を参考に計算してみましょう。
基本料金 | 1,738円26銭 | |
電力量料金 | 重負荷時間 | 22円44銭 |
昼間時間 | 19円64銭 | |
夜間時間 | 17円40銭 |
契約電力が300kW、力率が90%(割引5%)の場合の計算式は以下になります。
基本料金:1,738円26銭 × 契約電力:300kW × 力率割引:0.95
月の基本料金は495,404円になります。
関西電力
関西電力の高圧電力BSの料金単価を参考に計算してみましょう。
基本料金 | 2,043円80銭 | |
電力量料金 | 夏季 | 16円68銭 |
その他季 | 15円73銭 |
契約電力が450kW、力率が100%(割引15%)の場合の計算式は以下になります。
基本料金:2,043円80銭 × 契約電力:450kW × 力率割引:0.85
月の基本料金は781,753円になります。
中国電力
中国電力の業務用電力の料金単価を参考に計算してみましょう。
基本料金 | 1,996円50銭 | |
電力量料金 | 夏季 | 31円32銭 |
その他季 | 29円88銭 |
契約電力が80kW、力率が95%(割引10%)の場合の計算式は以下になります。
基本料金:1,996円50銭 × 契約電力:80kW × 力率割引:0.9
月の基本料金は143,748円になります。
四国電力
四国電力の業務用電力の料金単価を参考に計算してみましょう。
基本料金 | 1,665円08銭 | |
電力量料金 | 夏季 | 28円66銭 |
その他季 | 27円48銭 |
契約電力が220kW、力率が100%(割引15%)の場合の計算式は以下になります。
基本料金:1,665円08銭 × 契約電力:220kW × 力率割引:0.85
月の基本料金は311,369円になります。
九州電力
九州電力の業務用電力A(※標準電圧6,000V)の料金単価を参考に計算してみましょう。
基本料金 | 2,142円78銭 | |
電力量料金 | 夏季 | 13円38銭 |
その他季 | 12円45銭 |
契約電力が300kW、力率が85%(割引無し)の場合の計算式は以下になります。
基本料金:2,142円78銭 × 契約電力:300kW × 力率:1
月の基本料金は642,834円になります。
沖縄電力
沖縄電力の高圧電力Aの料金単価を参考に計算してみましょう。
基本料金 | 1,841円43銭 | |
電力量料金 | 夏季 | 30円94銭 |
その他季 | 29円62銭 |
契約電力が110kW、力率が100%(割引15%)の場合の計算式は以下になります。
基本料金:1,841円43銭 × 契約電力:110kW × 力率:0.85
月の基本料金は172,173円になります。
高圧電力の基本料金を安くする方法3選
最後に、基本料金を下げるための3つの方法をご紹介します。
①力率を改善する
力率が100%ではない場合、改善することにより力率割引を受けることが可能です。
なお、力率が85%の場合、力率が1%上がるごとに基本料金が1%割引されます。
85%を下回っている場合は、割増し請求されているため、設備の買い替えやコンデンサといった力率改善機器の導入を検討してみてもよいでしょう。
②ピーク値を抑えて契約電力を下げる
契約電力は、直近12カ月の使用電力量のうち、もっとも高い月の最大需要電力から最も大きいピーク値を算出して決定します。
そのため、ピーク値を下げることが契約電力削減につながります。
ピーク値を下げる、ピークカットとピークシフトの2つの方法についてご説明します。
ピークカット | 電力の使用量が最も多い時間帯に、照明や空調・生産設備といった機器による電力使用量を削減することにより、ピーク値を抑える施策。 |
ピークシフト | それぞれの機器の稼働時間帯を分散させることにより、ピーク値を減らす施策。 ピークカットと似ていますが、ピークシフトは使用する電力量を移動させて、全ての時間帯の電力使用量を均一化するイメージのため、全体の電力使用量に変化はありません。 |
ピーク値を抑えるためには、デマンドコントロールを導入して使用状況を管理したり、日頃から節電を意識することが重要です。
③基本料金単価を下げる
最もおすすめなのは、新電力への切り替えにより基本料金単価を下げる方法です。
力率を改善したり契約電力を下げるのは機器の導入が必要ですが、新電力への切り替えは無料でおこなえるからです。
2016年に電力の小売全面自由化により、700社以上の電力会社から料金プランを選択できるようになりました。
例えば、東京電力の業務用電力の基本料金単価(2024年4月1日以降契約分)は「1,890円00銭」ですが、電力会社の中には「653円87銭」で提供している契約メニューもあります。
仮に契約電力が200kW、力率100%の場合、東京電力は321,300円/月に対して、新電力のプランだと111,157円/月となり、毎月210,143円を削減することが可能です。
また、電力会社を切り替えると、基本料金のみならず電力量料金の削減が見込めるメニューもあります。
力率改善や契約電力を下げる方法はコストをかける必要がありますが、電力会社の切替は費用がかかりません。
まずはお金をかけずに見直せるところから着手してみてはいかがでしょうか。
市場連動型プランなら電力量料金も下げられる可能性あり
ここまで高圧電力の基本料金を下げる方法について説明しました。電気代の値上がりリスクを避けたい法人が知っておきたいのが「市場連動型プラン」です。
市場連動型プランとは、30分ごとに電力量料金の単価が変動するプランです。
市場連動型プランでは「JEPX」という電力の卸市場から仕入れた電気を供給します。JEPXの価格は「市場価格」といい、需要と供給に応じて30分ごとに価格が変動する仕組みとなっています。
市場連動型プランの料金の内訳は以下です。
電気料金=基本料金+電力量料金+再生可能エネルギー発電促進賦課金
市場連動型プランは、JEPXの市場価格に電力会社の管理費を上乗せしたものが電力量料金になります。下図のとおり、仕入れ価格に基づいて料金プランが設計されています。
市場連動型プランを、大手電力会社の一般的な料金プラン(燃料調整型プラン)と比較した場合のメリットは下記の3点です。
1.料金内訳が明瞭なので透明性が高い
燃料調整費型プランは料金内訳が不透明な上、突然の値上げになることも少なくありません。市場連動型プランの料金体系は市場価格と管理費が明確に分かれているため、不透明な値上げリスクが低いです。
2.倒産・事業撤退リスクが低い
燃料調整費型プランとは異なり、市場連動型プランは料金設定が仕入れ値に基づいてるため、燃料費高騰の影響を受けることはありません。
3.市場価格が下がれば料金単価が安くなる
燃料調整費型プランは料金単価が24時間固定される一方で、市場連動型プランは市場価格に応じて電気代の単価が変動するため、単価を大幅に下げられる可能性があります。
もちろん、市場価格が高値をつけ、市場連動型プランの単価が燃料調整費型プランよりも高くなるリスクもあります。
しかし燃料費が高騰していても、太陽光発電の導入量が増える昼間の市場価格は最安値の0.01円/kWhをつけることもあり、電気代を安くできる可能性があります。
ちなみに0.01円/kWhの最安値をつける時間帯は年々増加しています。
特に、日照条件が良い九州エリアでは、市場価格が0.01円/kWhの時間が2023年は年1174時間となり、年間の総時間数(8,760時間)の約13%に達しています。
JEPXの市場価格は、天候が悪い日や夜間などの太陽光発電ができない時間帯や、夏冬の電力需要が増える時期は高くなる場合があります。そのため、市場価格が高騰すれば、市場連動型プランが燃料調整型プランよりも高くなるリスクは当然考えられます。
しかし、0.01円/kWhとなる時間帯が増えているため、特に昼間の稼働が多いオフィス・工場では電気代を下げられる可能性が高いといえます。以下は市場価格が0.01円/kWhを記録した際の、市場連動型プランと燃料調整型プランそれぞれの平均価格のイメージ図です。
市場連動型プランは、市場価格に電力会社の経費が上乗せされるケースが多いため、電力会社が固定単価の引き上げを発表したり、突然倒産・撤退したりするリスクはほとんどありません。
「電気代を安くしたい」「電力会社との契約で悩みたくない」法人は、市場連動型プランを検討するのも1つの手です。一度、見積もりをとって比較することをおすすめします。
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これまでに9割以上の法人企業が電気代削減に成功しています。
電気代削減率は平均16.1%で、最大で25%下がった実績があります。
北海道から九州まで、工場やオフィスビル・倉庫・医療施設・ホテル・店舗など様々な業種の企業様の電気代を削減してきました。
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それぞれの内容を説明します。
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そのうえで各プランの特徴を丁寧に説明し、不安や懸念点を解消します。
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一括見積もりを依頼するために必要なものは?
一括見積もりを依頼するために必要な資料は以下の2点です。
- 12ヵ月分の電気料金の明細書
- 30分値データ
◎電気料金の明細書について
電気料金の明細書については、原則として直近12ヵ月分のものをご準備ください。
明細が手元になく、すぐに用意できない場合は準備可能な分で試算するため、お気軽にお問い合わせください。
◎30分値データについて
30分値データとは、30分単位の電気使用量を確認できる資料です。
精緻に試算することができるため、ご準備いただくことをおすすめします。
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もちろん、30分値データがなくても一括見積もりは可能です。
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