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【2025年】JEPXとは?仕組みと今後の見通しをわかりやすく解説

「JEPXとはどのような市場なの?」
「JEPXの今後の動向や価格推移が気になる」
「現行プランより損をしないか心配…」

このような不安を抱えていませんか。

電気代の高騰により、電気代の見直しを進める企業は増えています。
その手段として大手電力会社が提供する一般的な料金プランから、市場連動型プランに切り替えるケースが増加しています。

市場連動型プランに切り替えるときに注意しないといけないのは、電気の調達先がJEPX(日本卸電力取引所)に変わる点です。

この記事では、JEPXの役割や市場価格の決まり方、今後の価格推移の見通しについて詳しく説明します。

JEPX(日本卸電力取引所)の役割とは

JEPX(日本卸電力取引所)とは、日本で唯一、電力を売買できる市場のことをいいます。
なお、JEPXは「Japan Electric Power Exchange」の略称で、読み方は「ジェーイーピーエックス」「ジェイペックス」です。

JEPXでは、発電事業者が電力を売り、小売電気事業者などが必要な電力を買い取ります。

2000年に始まった電力自由化により、新電力会社が電力の小売事業に新規参入したものの、その大半は自社発電所を持っていませんでした。

そのため、卸電力を扱う市場として2003年にJEPXが誕生し、2005年から取引を開始しました。

関連記事:【高圧】新電力とは?仕組み・メリットデメリットをわかりやすく解説

JEPX(日本卸電力取引所)の取引市場は7種類

JEPXの取引市場は7つあります。

それぞれの市場の特徴、取引期間、価格の決定方法などを説明します。

①スポット市場(一日前市場)とは

スポット市場は、JEPXで最も取引高が多いメインの市場です。

市場連動型プランは主にスポット市場での取引により電気を供給します。翌日分の電力取引を行うことから、一日前市場ともいわれます。

スポット市場は、1日を30分単位の合計48コマに区切り、1コマごとに売買がおこなわれます。

(出典:JEPX「日本卸電力取引所取引ガイド」

そしてスポット市場の取引価格は「ブラインド・シングルプライス・オークション方式」で決定します。

(出典:JEPX「卸電力取引所の仕組みと取引の現状」

このオークション方式では、発電事業者(電力の売り手)は、48コマ分の発電できる電力量と価格を、取引システムを通じて入札します。

一方で、小売事業者(買い手)は48コマ分の買いたい電力量と価格を同じく入札します。
48コマのそれぞれにおいて、供給曲線と需要曲線が一致したところが約定価格となります。

シングルプライス(単一価格)オークションの名の通り、買い手は10円/kWhで買いたくても、売り手は20円/kWhで売りたくても、約定価格が15円/kWhの場合、15円/kWhで取引しなければなりません。

なお、スポット市場で翌日分の取引は、前日の午前10時までに入札する必要があります。

②当日市場(時間前市場)とは

当日市場(時間前市場)は、スポット市場取引で足りない分を取引する市場のことです。

スポット市場は翌日分の電気の取引をしますが、気温や天候の変化により需要量が増加したり、一方で発電所が急停止するなどで供給量が減少する場合があります。

そのようなときに追加の取引を行うために利用されます。

当日市場は、24時間365日開設されており、電気を受け渡す1時間前まで取引ができます。
例えば、13時~13時30分までの1コマで使う電力であれば、当日の12時まで取引が可能です。

スポット市場と同じく、1日を48コマに分割した30分単位で電力が取引され、価格はザラ場取引で決まります。

ザラ場取引とは、売り注文と買い注文の値段が一致したときに売買が成立する取引のことをいいます。また、値段が同じであれば注文が早いものが優先されるオークション方式がとられています。

③先渡市場とは

先渡市場とは、将来必要となる電気を事前に確保するための市場のことです。
この市場では1週間単位、1ヵ月単位、1年単位の3種類の電力取引がおこなえます。

そして、取引は全日0~24時までの「24時間型」と、平日昼間8~18時の「昼間型」にわかれます。※年間商品は昼間型はない

先渡市場のメリットは、電気を前もって確保できるため、将来の価格変動リスクを抑えることができる点です。リスクヘッジのために利用されます。

先渡市場はザラ場取引がおこなわれ、売り注文と買い注文の値段が一致したときに売買が成立します。

④分散型・グリーン売電市場とは

分散型・グリーン売電市場とは、太陽光発電や風力発電をはじめとした再生可能エネルギーやコージェネレーション発電設備でつくられた電気を販売できる市場のことです。

JEPXの会員でなければ電気を売れないスポット市場や当日市場とは違い、個人や企業も市場に参加し、自家発電した小口の余剰電力を販売することができます。※ただし、電気を買えるのはJEPXの会員だけです。

なお、この市場は日本卸電力取引所が電力を買い取っているわけではなく、取引の場を提供するだけです。そのため、売買契約は当事者間で結ばれます。

最低取引単位(1,000kWh以上)の下限がなく、販売量や販売価格などの条件を任意で設定できます。買い手が条件を提示し、最も条件のいいものが落札されます。

⑤ベースロード市場とは

ベースロード市場とは、コストが安く、安定して発電できる大規模電力(ベースロード電源)を取引するための市場のことです。

ベースロード電源に該当するのは、石炭火力や水力発電、原子力発電、地熱発電などです。
発電コストが安価で、昼夜を問わず多くの電気が安定して作れるため、エネルギー供給の基礎をなす電源とみなされています。

発電するには大規模な発電所の建設が必要なため、大手電力会社がベースロード電源を保有・独占してしており、新電力が参入しようとしても障壁がありました。そこで2019年7月にベースロード市場を創設したため、新電力会社も入手しやすくなったのです。

現在は、7月・9月・11月・1月の年4回、ベースロード電源の取引が実施されています。取引単位は1年間で、シングルプライス・オークション方式で価格が決定します。

⑥非化石価値取引市場とは

非化石価値取引市場とは、非化石電源が持つ「環境価値」を取引する市場のことです。

非化石電源とは、CO2をはじめとした温室効果ガスを排出しない、再生可能エネルギー・大規模水力・原子力による発電のことをいいます。

この非化石電源は「環境にやさしい」という付加価値を持ちます。その付加価値のことを「環境価値」といい、環境価値を証明書として発行したものを「非化石証書」といいます。

非化石証書を購入することで「自社で使用する電気はCO2排出量がゼロなので地球にやさしい」という証明になります。

非化石価値取引市場は2018年から始まりましたが、2021年に改編され、以下の2つの市場に分かれました。

  • 再エネ価値取引市場
  • 高度化法義務達成市場

再エネ価値取引市場

再エネ価値取引市場とは、再生可能エネルギーで作った電力の非化石証書(=FIT非化石証書)を扱う市場のことです。

この市場で取り扱うFIT非化石証書は、どの再エネ発電所で作られたのか、発電所の情報を実証することができます。

高度化法義務達成市場

高度化法義務達成市場とは、再生可能エネルギー以外で作った電気の非化石証書を扱う市場のことです。

水力やFIT期間が終了した電源でつくった電気は「非FIT(再エネ指定)非化石証書」、原子力で作った電気は「非FIT(指定なし)非化石証書」といいます。

小売電気事業者には、2030年度までに非化石電源による電力の販売比率を44%に上げることが義務付けられており、その目的に特化して作られた市場です。

関連記事:非化石証書とは|仕組みや企業が導入するメリット・注意点を解説

⑦間接送電権取引市場

間接送電権取引市場とは、電力エリア間をまたぐときの送電価格の差を解消するために設けられた市場のことです。

エリアを越えて電力の取引をおこなう場合、各エリアで取引する電力に価格差が出ると、どちらかに損が生じてしまいます(価格差はJEPXの取り分)。そこで、間接送電権を市場で安く入手しておくと、価格差を減らすことができます。

シングルプライス・オークション方式で売買がおこなわれ、4~5週間分の週間商品を取引します。

JEPXの市場価格の決まり方

JEPXで最も取引高が多いスポット市場では、1日を30分単位の合計48コマに区切り、1コマごとに売買がおこなわれて市場価格(約定価格)が決まります。

売り手と買い手の入札が一致したところで価格決定しますが、下記の5つの要素に影響を受けます。

①燃料費

市場価格は火力燃料(石炭・原油・天然ガス)との相関が強いため、燃料価格が安ければ市場価格は下がり、高ければ上がる傾向がある。

②需給バランス

電力需給に余裕があれば市場価格は下がる。酷暑や寒波の影響により、供給量に対して需要が高まったり、発電量が減るなどして需給がひっ迫すれば上がる場合が多い。

③季節

春秋は空調の冷暖房需要が伸びないため市場価格が下がり、夏冬は需要が増えるため上がる場合が多い。

④天候

晴れの日は太陽光発電量が増えるため市場価格が下がり、雨や曇りの日は上がる場合が多い。

⑤時間帯

昼間(特に8時~14時)は太陽光発電量が増えるため市場価格が下がり、夜間は上がる場合が多い。

なお、JEPXでは、北海道・東北・東京・中部・北陸・関西・中国・四国・九州の9つのエリアで取引が行われ、地域ごとに市場価格が異なります。全国一律の価格ではありません。

下図は2024年4月17日の関西エリアのスポット価格です。春で電力需給に余裕があり、晴天で太陽光発電が増加したため、7時~15時の昼間時間は0.01円/kWhをつけています。

一方で、雨や曇りの日は太陽光発電の発電量が増えないため、市場価格は上がる場合があります。

同日の東京エリアのスポット価格の推移を見てみましょう。2024年4月17日の7時~15時の時間帯は8.83円/kWh~10.49円/kWhで推移しています。

その日、関東地方は雨や曇りの地域が多かったため、太陽光発電の発電量があまりなかったことも影響しているでしょう。

2022年以降の卸電力市場の動向

直近の市場価格の推移と動向について解説します。

2022年の市場動向

2022年のロシアによるウクライナ侵攻の影響により、燃料価格が高騰しました。

ロシアは2020年度、天然ガス輸出量は世界第1位、石油輸出量は第2位、石炭輸出量第3位の資源大国です。これらの資源の輸出制限をおこなったことにより、世界的にエネルギー供給量が激減しました。

さらに日本では、2022年3月頃から円安が急激に進み、4月下旬には1ドル130円台に突入、10月には150円を突破。円相場の円安進行もあり燃料の輸入費用が高止まりしました。

それにより、東京電力や関西電力といった大手電力会社は軒並み数百〜数千億円規模の赤字を計上。

大手電力会社が、高圧電力をはじめとした料金メニューの燃料費調整額の上限撤廃を発表したことも話題になりました。

これまでは燃料費が高騰したとしても燃料費調整額に上限が設けられていたため、その影響は限定的でした。ところが上限を撤廃したことにより、燃料費の価格変動が反映されることになったのです。

また、燃料価格と相関が強いJEPXの市場価格も上昇しました。
その影響により、新電力会社の撤退や倒産が相次ぎました。

当時、新電力が需要家向けに販売していた料金メニューの多くは、市場価格が安く、値上がりしない前提で作られていました。

そのため、市場価格が料金単価を越えて高値をつけた場合、その高騰分を電気料金に転嫁できず、逆ザヤが起きる構造になっていました。

2023~2024年の市場動向

2023年に入り、JEPXの市場価格は徐々に落ち着きを取り戻しました。原油・天然ガス・石炭などの燃料価格が下落局面に入ったことがその理由に挙げられます。

一方で、長引く燃料価格の高騰への対応に苦慮し、2023年4月1日には東京電力や関西電力といった大手電力会社が一斉に高圧電力の値上げを行いました。

また、新電力会社の中には電力プランの見直しをおこない、「市場連動型プラン」の提供を開始し始めたのもこの頃です。

長期的に見てJEPXは電気料金にどう影響するのか

JEPXの市場概要から価格決定条件、市場動向について説明しました。続いては、現行プランとの違いを見ていきましょう。

大手電力会社が提供する料金プラン(以後ベーシックプラン)は、調達する電源の多くは火力発電です。2050年までの石炭と天然ガスの価格予測では、2050年まで値上がりが続くことが予測されています。

(出典:企業 省エネ・CO2削減の教科書「EIAによる石炭価格予測」「EIAによる天然ガス価格予測」)

天然ガスと石炭による火力発電は、日本の電源構成の7割を占めているため、電気料金の値上げにも直結します。

一方で、JEPXの価格推移は長期的に見て、どうなるのでしょうか。それを語る上で外せないのが、2050年までのカーボンニュートラル実現に向けた目標です。

カーボンニュートラルとは、CO2やメタンなどの温室効果ガスの排出量を「プラスマイナスゼロ」にすることです。

2020年10月に、菅前内閣総理大臣が「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と宣言したことで、日本もカーボンニュートラルの実現に向けて動き出しました。

カーボンニュートラルが必要な理由は、地球温暖化を抑止して、安心安全な社会を実現するためです。

また国もカーボンニュートラルの実現を達成するために、発電時にCO2が発生しない再生可能エネルギーの導入を後押ししています。下図のとおり、2022年度の再エネの電源構成は21.7%ですが、2030年に全体の36~38%にまで増加する見通しです。

(出典:資源エネルギー庁「日本における再エネ導入の推移」)

日本の今後の電源構成は再エネの割合は高くなり、石炭や天然ガスなどの火力発電の割合は低くなる見通しです。そのため、JEPXと燃料価格の相関は弱まり、燃料値上がりの影響を回避できる利点もあります。

また太陽光発電の導入量が増加していることから、市場価格が0.01円/kWhとなる時間数も年々増加しています。特に、日照条件が良い九州エリアでは市場価格が0.01円/kWhの時間が2023年は年1174時間となり、年間の総時間数(8,760時間)の約13%に達しています。

JEPXの市場価格は、天候が悪い日や夜間などの太陽光発電ができない時間帯や、夏冬の電力需要が増える時期は高くなる場合があります。そのため、市場価格が高騰すれば、市場連動型プランがベーシックプランよりも高くなるリスクは当然考えられます。

しかし、0.01円/kWhとなる時間帯が増えているため、特に昼間の稼働が多いオフィス・工場では電気代を下げられる可能性が高いといえます。以下は市場価格が0.01円/kWhを記録した際の、市場連動型プランとベーシックプランそれぞれの平均価格のイメージ図です。

市場連動型プランは、市場価格に電力会社の経費が上乗せされるケースが多いため、電力会社が固定単価の引き上げを発表したり、突然倒産・撤退したりするリスクはほとんどありません。

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  • 30分値データ

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